1. 歳末の秋田市民市場

    混雑する市場にて、旅行者とおぼしき若い外国人カップルが、真赤な酢蛸の前でしばらく佇み眺めていた。カルチャーショックを受けたに違いない。...

  2. 歳の市・正月花

    秋田市民市場周辺今でこそ、しめ飾りをはじめとする正月の飾り物しか扱わない歳末の歳(とし)の市も、かつては様々な生活用品が並べられていた。人生の大半を旅に生き、晩年の二十八年間、秋田に定着し膨大な紀行文を残した、日本民俗学の先駆者・菅江真澄は、享和元年(1801)の日記、『雪の道奥(みちおく)雪の出羽路(いでわじ)』で、久保田町(秋田市)通町での、歳の市の活気あふれる様子をリアルに描写している。十二月二十...

  3. 餅つき大会

    弥高神社境内・秋田市千秋公園鏡餅は生命の根源である太陽の象徴。鏡餅のカタチは神社の御神体として祀られる凸面鏡。...

  4. マカロニしるこ・給食

    小学校の給食で出された印象深いメニューの一つ、「マカロニ入りおしるこ」。コッペパンとオカズに添えられたデザートで、一見奇妙な組み合せだが、餅の代用品であるマカロニのプニュッとした食感が、甘いおしること意外にマッチしていてた。メニューには「おしるこ」とだけ記され、貝マカロニもあったはず。これが出るとみんな喜んでいたのは、その甘味の魅力もさることながら、脱脂粉乳のかわりのメニューであったこと、まずい脱...

  5. 北東北のシンプルをあつめにいく

    表紙が角館のイタヤ馬、裏表紙には、杉山寿山堂の秋田諸越がデザインされたエッセイ。著者の堀井和子さんは、料理スタイリストという、よくわからない肩書きの人だが、その著書は人気があり、熱烈なファンも多いらしく、手元にあるものは、2004年3月18日第1刷発行、4月15日第2刷発行と、一ヶ月のうちに版を重ねている。「北東北」のタイトルにそぐわず、内容の大半は、秋田の食材と料理のこと。というのも、旦那さんが秋田市出身...

  6. マルサン・レクイエム

    1994年7月に閉店し、秋田市広小路で廃虚を晒していた、マルサンショッピングセンターの解体が始まった。土地は5月に秋田地裁が実施した入札で、「共立メンテナンス」(本社東京)が約1億3000万円で落札、2006年4月をめどに長期滞在型の大浴場完備ホテルを建てることを発表している。市内では他に二件のホテル建設が進行しているが、こんなにホテルばかり増えて大丈夫なのだろうか。マルサン(旧名・丸三)は1961年の創業、庶民...

  7. きりたんぽ・鈴和商店

    新米が出回る九月ころになると、秋田市民市場近くの鈴和商店ではきりたんぽ造りが始まる。添加物無しの炭火焼手造りきりたんぽは、風味が良く、機械造りと違って鍋に入れても煮崩れしにくい。おまけに値段も手頃なため、年末ともなればフル操業で客足が絶えることがない。このきりたんぽ焼き器は、赤く燃える備長炭を中心に杉串を入れる穴が同心円に並んでいて、まずは外側の列で暖め、徐々に水分を抜き、最期は最前列でキツネ色に...

  8. うぎんのコロちゃん

    銀行の貯金箱マスコットが広く配布されるようになったのは、昭和三十年代半ばからのこと。秋田犬の仔犬ををデザインした、羽後銀行(現北都銀行)のマスコット「うぎんのコロちゃん」は昭和三十八年に誕生し、四十年には、「コロちゃんの歌」が、ボニージャックスによりレコーディングされたと社史にある。CMソングとしてメディアにも流れた思われるが、この歌はまったく記憶にない。楽譜、5小節目の冒頭「きょ」の部分が抜けて...

  9. 「菊谷小路」という不可解

    秋田市・歴史の小路(一)勝平得之『雪の街』昭和七年勝平得之の「雪の街」は、戦前の通町と菊谷小路入口の風情を描いた傑作だ。ボタ雪の降りしきるなか、一仕事終えたのだろうか、酒屋の前に馬橇を止めて馬方が店先に入っていく。この絵は、その昔、酒屋の前で馬を止め、入り浸りになっていた大酒飲みの馬方がおり、主人が変わっても馬は酒屋の前で立ち止まる癖がつき、押しても引いても動かなかったという逸話からヒントを得て描...