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なつかしの「いかあられ」
0「いかあられ」は、スルメイカを伸ばして短冊に切り、塩と水飴で煮しめた佃煮の一種。秋田へは北陸方面から北前船で伝えられたものだろうか。他県では「いかあられ」に白ゴマと唐辛子などをまぶすが、秋田では三色豆(金時豆・青えんどう・白花豆)などで、彩りを添えるのが特徴となっていて、これがあると無いとでは随分印象が変わってしまう。秋田で育った者にとって、豆の入っていない「いかあられ」は、なにか物足りなく、魅力...
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明治末期の清酒店・馬口労町
穀物酒類商・伊藤商店 秋田市馬口労町明治四十五年、顧客に送った年賀状切妻屋根から突きだした化粧棟木、重厚な破風板、破風下の三段化粧梁が眼を惹く主屋。主屋の前面のコミセでつながる右手の建物は、瓦屋根の倉造りで、隣家との境には防火用の卯建(うだつ)が上がっている。主屋には大日本麦酒の「サッポロビール」、右手には「銘酒イネマサムネ」の屋根看板。サッポロビールの看板の上には長方形の木彫看板らしきものが提げ...
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昭和レトロ建築「港の銀水」
港の銀水秋田市土崎港中央通り昭和十年(1935)、土崎港町永覚町に銀水食堂として開業、昭和二十三年(1948)、現在地に新築移転。七十年のあいだ港っ子に愛され続け今に至る、レストラン兼割烹。シンプルながらも、箱看板の店名ロゴの配置と配色など、建物全体が醸し出す、昭和の大衆食堂的レトロ感が良い。この通りには同じく昭和二十年代に建てられた商店が数軒あり、その店名もよく似た箱看板なのは、同じ施工業者の手によるも...
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川反に謎の切支丹燈篭
タヌキの慰霊碑がある川反三丁目・秋葉神社境内に、武将茶人・古田織部の創案とされる、織部燈篭、別名・切支丹燈篭がある。ステンドグラスが施されたお堂に安置された燈篭に刻まれた子育て観音像は、キリストを抱くマリアにも見えるが……。保戸野鉄砲町にも同形の灯籠がある。北鉄砲町 声体寺境内墓地の中で場違いのように建つ燈篭には、マントを着けたキリストのようにも見える、長身の地蔵尊が彫られ、燈篭前面を取り巻くように...
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川反情緒・風景を読む
「秋田 川反ノ景」大正期の絵葉書三丁目橋から四丁目橋方向を撮影したものと推定する。右手の川反には二階建ての料理屋・芸妓置屋が並び、板と丸太の杭で土留めされた川岸には、「何をくよくよ川反柳」と唄われた、川反のシンボル・柳が枝を垂らし川面に影を落としている。左手は旭川の堀替のときに出た土砂で造られた、松と桜が植えられた土手が続き、川岸には屋根付きの遊覧ボートらしきものが浮かんでいる。川反の酔客も芸妓を...
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川反にタヌキの慰霊碑
秋葉神社 川反三丁目明治十九年の大火・俵屋火事のあと、那波家が敷地内に建立した秋葉神社(火伏せの神を祀る)に「無智大明神」という文字が刻まれた石碑がある。昭和十六年二月二十三日建立無智大明神川反三丁目願主 成見永助丁内有志一同「無智大明神」という聞きなれぬ名を常々不可解に思っていたところ、昨年発行された『秋田市史叢書6「屋敷神・講・祠資料」』に、その由来が以下のように記されていた。町内で小間物屋を...
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鍋茶屋の名物看板も消えて
川反四丁目の郷土料理店「鍋茶屋」が約四十年の歴史に幕を下ろしたのは今春のこと。張り紙左手の玄関から入った奥には、閉店後間もなく新しい店が入った。カウンターと小上がり席の一階と、二階座敷席の部分はテナント募集の看板がつい最近まで掲示されていたが、ようやく入居者が決まったようで、今は内外装工事中のため、二階の壁に掲げられていた名物看板も取り外されてしまった。ありし日の店頭しょっつる貝焼、やつめ貝焼、ど...
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蘇る月刊『少年』の時代
光文社が創立六十周年を記念して、先ごろ月刊『少年』昭和三十七年四月号の完全復刻版を限定出版した。ずいぶん前から予約を受け付けていたらしいが、それを知ったのは発売後、もう少し遅れていたら、新品では入手できなかった可能性もある。五千五百円という値段は高く感じられるかも知れないが、この時代の月刊少年誌の古書相場は状態にもよるが総じて高く、もしも附録も全て揃ったデットストック品(以前は希にみられたが…)が...
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金萬のルーツはどこに
「金萬」広告 昭和四十三年かつては秋田駅前の金萬本舗店頭に、赤地に黒く、このイラストが入った看板が設置されていた。今こうして見るとなんともインパクトあるキャラだったんだねえ。ロゴを入れるスペースの関係で、金萬が小判形をしているが、もしかして初期はこんな形だったなんてことは無いよね。「金萬」=「都まんじゅう系」の菓子に、「唐饅頭」(とうまんじゅう)というものがある。前回取りあげた、札幌名物「とうまん...
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背を伸ばす機械あり升
近現代日本における通販広告の歴史は、コンプレックスの歴史といっても過言ではないほど、人間の劣等感に訴えかける、いわゆるコンプレックス系広告は数多い。その代表的なものが「伸長器」という背を伸ばす器具。昭和三十年代から四十年代の少年雑誌には、毎号かかさず掲載されていたので見覚えのある方も多いと思う。TK式身長機 昭和三十年代首と足首をベルトで固定して、自力で牽引するイタイタしい姿が悲哀を感じさせる。他...