すずらん通り「さんや食堂」残影

戦後まもなく開業し、秋田市すずらん通りで最も昭和の面影を残す建物であった、旧「さんや食堂」が、昨年(2017)末、解体された。

すずらん通り・さんや食堂
▲2003.11 

引き戸を開けて入ると右手に小上がり、中央がテーブル席、左手に厨房。

看板にも名前が見える、一人鍋で食べる具沢山な肉鍋定食、親子丼、天ぷらそば等々、何を食べても外れのない老舗の味。 

すずらん通り・さんや食堂
▲昭和26(1951)年 新聞広告

すずらん通り・さんや食堂
▲昭和26(1951)年 新聞広告

創業者の名字の頭文字「三」と、下の名前の頭文字「弥」をとって「さんや」と命名。 

上掲広告にあるように、すずらん通りの別名は三丁目小路、または三丁目橋小路。北側に並列する山王大通り(竿燈大通り)は古くは二丁目小路と呼ばれて、元々は一丁目小路・三丁目小路・四丁目小路と同じ道幅の狭い小路であった。

すずらん通り・さんや食堂
▲2003.11

西隣に建つ「秋田市料亭会館」の一階に「定食」の置き看板と、オレンジ色の日除けテントが見える串揚げ専門店「あげや」。当ビル内にかつて、料亭(料理屋)に川反芸妓(芸者)を手配する「秋田検番」が存在した。これが「秋田市料亭会館」の由来。

「すずらん通り」の由来、「あげや」と「秋田検番」については巻末の関連リンク先を参照のこと。

すずらん通り・さんや食堂
▲2004.01 

すずらん通り・さんや食堂
▲2004.09

すずらん通り・さんや食堂
▲2008.05

平成18(2006)年頃「秋田市料亭会館」の看板が下ろされ「あげや」跡に、仙台の風俗情報提供会社が経営する無料案内所が入居。

すずらん通り・さんや食堂
▲2008.05

すずらん通り・さんや食堂
▲2008.01

昼夜を通して営業していた「さんや食堂」も、晩年は昼のみの短時間営業となり、やがて閉店状態が続くが、平成22(2010)年、店名を「彌ひら」と改めてリニューアルオープン。

すずらん通り・さんや食堂
▲2010.09

この新店名も旧店名と同様に創業者の姓名の一部をあしらったもの。

リニューアル後、約10年ぶりに肉鍋を食べたが、先代の料理とは味も見た目も別物となっていた。

平成26(2014)年11月頃「彌ひら」(旧さんや食堂)閉店。「さんや食堂」の開業から数えて70年弱の歴史に幕を下ろし、平成29(2017)年11月解体される。

すずらん通り・さんや食堂
▲2017.11