1987「AKTジャンボ迷路椿台」オープン

▼80年代後半の巨大迷路ブーム

1980年代の後半、日本で巨大迷路(立体迷路)ブームが巻き起こり、最盛期には津々浦々に100ヶ所を上まわる迷路施設が営業していた。

その巨大迷路ブームの火付け役は、ニュージーランドのスチュアート・ランズボロー。

迷路(通り抜けにくくつくられた道)

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

‥‥前略‥‥

 日本で1980年代後半に起こった迷路ブームは、スチュアート・ランズボロー Stuart Landsborough が、ニュージーランドのワナカという小さな村で始めた商業迷路がきっかけである。彼はいろいろな試行錯誤を重ね、迷路の立体化、チェック・ポイントの設定、仕切り壁の自由変更などで、人間の動きのコントロールのノウハウを得て、1985年(昭和60)に日本に乗り込んだ。日本では、87年には、ランズボロー・メイズという名のもとで20か所、そのほかを含めると百数十か所の迷路施設が商業化されていた。大きいものは、縦・横各90メートルもあり、平均所要時間は1時間前後である。迷路は単なる知的遊技にとどまらず、一種の軽い屋外スポーツとしての意義から、広く支持を受けたが、ブームが去るとこれらの施設は相次いで閉鎖された。[芦ヶ原伸之]

迷路とは - コトバンク より

スチュアート・ランズボロー
▲スチュアート・ランズボロー 1993年12月『The Rotarian』誌より

  • Puzzling World (パズリング・ワールド)ニュージーランド ワナカ
  • ランズボロー創設の元祖巨大迷路とトリックアートのアミューズメントパーク

ランズボロー式迷路の特徴は、4つのチェックポイントを配置し、仕切パネルを可動式にしたこと。生垣などを使用した従来の古典的迷路と異なり、コースを自由に変更できるため、定期的にバターンを変えることでリピーターを飽きさせない。

大阪の「メイズプロダクツ」がランズボロー迷路の国内独占権を取得して、フランチャイズ展開。同社傘下のランズボロー設計による迷路施設は、島根県に現存する「ランズボローメイズ匹見」のように、創始者の名を冠したが、その成功を受けて、ランズボロー迷路を模倣した非公式の巨大迷路が各地のレジャー施設内などに続々と誕生する。

秋田県内にはかつて3ヶ所の巨大迷路が存在したが、その先陣を切ったのが「AKTジャンボ迷路椿台」であった。

▼「AKTジャンボ迷路椿台」開園

1987(昭和62)年3月、河辺郡雄和町(現・秋田市雄和)の「雄和サイクリングターミナル」前に、秋田初の巨大迷路「AKTジャンボ迷路椿台」がオープン。

面積約2,800平方メートルの敷地に、秋田杉の素材を使用し、総工費3,000万円で建設。「秋田ステージ」が企画・設計し「AKT秋田テレビ 」が主催した。

東北初、立体迷路が完成
 ゴールまで1時間

AKTジャンボ迷路椿台

河辺郡雄和町の「雄和サイクリングターミナル」に建設が進んでいた立体巨大迷路が完成。きょう21日オープンする。同町の新たな観光拠点として定着、人気を集めている同サイクリングターミナルの第2次開発構想の第1弾で、全国的にブームの立体迷路がお目見えするのは東北で初めて。

完成した巨大迷路は、同ターミナル向かいの草地に建設。施設の総面積は約2,800平方メートルで、この敷地の上に合板パネルを立ててジグザグ模様に複雑な仕切りをつくる。パネルの高さは2.2メートル。入口でタイムを記録、迷路の中にある4ヶ所のチェックポイントで通過確認のスタンプを押し、ゴールするまでの時間を競う。入口と中心部の合わせて3ヶ所にやぐらがあり大まかな自分の位置が分かるようになっている。

迷路は1時間前後で抜け出られるようになっているが、万が一“お手上げ”の場合は。途中4ヶ所にある“非常脱出口”から逃げることができる。

コースはコンピュータで管理され、1カ月前後で組み替える予定。

‥‥後略‥‥

1987(昭和62)年3月21日 『秋田魁新報』より

AKTジャンボ迷路椿台AKTジャンボ迷路椿台▲1987(昭和62)年3月 新聞広告

東北初登場! AKT ジャンボ迷路 椿台
あさって
3月21日(土)AM10:00 OPEN!

春休み ドカーンと挑戦しようぜ!
脱出までなん時間?

迷い心地、満点。話題のウォーキングパズル

いったんこの迷路に入りこんでしまったら頼れるのは自分の体力と根気、そして方向感覚だ
とにかく歩かなければ出られないから、日頃マイカーに頼ってばかりの人にはピッタリの遊び

■開場時間/AM10:00〜PM4:00(日・祭日 AM9:30〜PM4:00)
■入場料金/一般 500円 小中学生 400円
■場所/雄和町サイクリングターミナル前
●主催/AKT秋田テレビ
●後援/秋田県/秋田県教育委員会/雄和町/秋田魁新報社/雄和町サイクリングターミナル
●協賛/大塚製薬
●企画製作/秋田ステージ

〈迷路の遊び方〉
この迷路はスバリ紙面迷路の立体版です。
約2.640㎡の敷地にジグザグの木製パネル仕切迷路を作り、入場者が4つのチェックポイントを通過しゴールを目指す、ニュータイプのレジャーランドです。まず入口でタイムカードを押し迷路に入り、知恵を使って次々にチェックポイントを探し、そのチェックポイントで通過証明のスタンプを押し次を目指します。めでたくゴールインしたらゴールタイムを押して、入場者の通過タイムがわかる仕組みになっています。ご家族で、グループで、恋人、友人、また一人でも楽しめる遊びです。中央の塔にはスタッフがおり、4ヶ所に非常口も設けられ、、万一お手上げの方はリタイヤもできます。
何度チャレンジしても面白いプレイゾーンです。

キャラクターショー
超人機メタルダー

1987(昭和62)年3月から放映された、東映製作の特撮テレビ番組『超人機メタルダー 』のキー局は「テレビ朝日」だが、まだ系列の「秋田朝日放送」が存在しないため、日テレ系の「ABS秋田放送」にて放映された。

AKTジャンボ迷路椿台
▲ストップウォッチとモグラ?を組み合わせたロゴ

AKTジャンボ迷路椿台

主催社である「AKT秋田テレビ」では連日CMを放映。下記YouTubeにて、当時のCM映像およびテロップCMを閲覧できる。

  • 秋田ローカルCM集(昭和編)④ - YouTube
  • 0:14 でっかく遊ぼう「ジャンボ迷路椿台」
  • 1:00 AKTジャンボ迷路情報
    ゴールデンウィーク 毎日先着100名様に特製テレフォンカードプレゼント
  • 1:33 AKTジャンボ迷路情報
    キリン株式会社主催 キリンカップ駅伝タイムトライアル参加者募集
  • 2:45 ゴールデンウィークは中央交通の増発バスで迷路に行こう

AKTジャンボ迷路椿台CM

AKTジャンボ迷路椿台CM

AKTジャンボ迷路椿台CM

 ゴールデンウィークには、中央交通による臨時直行バスが運行された。

1987(昭和62)年3月末のオープンから、11月後半の冬期休業まで、シーズン中13万人を超える入場者を記録する。

AKTジャンボ迷路椿台

▼ジャンボ迷路の移設と閉園

「AKTジャンボ迷路椿台」が開設された場所が「ミネソタ州立大学機構秋田校」の建設用地となったため、1989(平成1)年の春、サイクリングターミナルの東隣り、サイクル列車の線路内側、現在の有料市民農園「椿台スーパー農園」Aゾーンの地に迷路を移設。

移設を前にして、迷路は「AKT秋田テレビ」から雄和町に譲渡され、以降、AKTの冠が消えた「ジャンボ迷路椿台」の管理・運営は、サイクリングターミナルが担当するため、同テレビ局が主催した「AKTジャンボ迷路椿台」の時代は、オープンから2年間ということになる。

面積は初期が約2,800平方メートルに対して、約2,000平方メートルに縮小。移設に際して迷路の仕切り板を透明に変更し「向こうが見えながらも思うように進めない」というもどかしさを強調した。

「雄和サイクリングターミナル」は「日本自転車振興会 (競輪)」と県の補助を受けて1985(昭和60)年オープン。レンタルサイクルのほか、宿泊・宴会施設、レストラン、グラウンド・ゴルフ場などを備える。現在は第三セクターの「雄和振興公社」が運営。レストランの名物はジャンボおにぎり。

1995(平成7)年時点での「雄和サイクリングターミナル」内の遊具・レジャー施設は、ジャンボ迷路のほかに、変わり種自転車各種、ローラースケート、バギーバイク、ポニー乗馬、忍者屋敷、サイクル列車、オフロードゴーカート、レーザーガンゴルフなど。

雄和サイクリングターミナル
▲サイクル列車 宝くじ号

1988(昭和63)年7月、宝くじ助成金で導入された20人乗りサイクル列車は、各座席にペダルがある足こぎ列車。

AKTジャンボ迷路椿台

サイクリングターミナル前の長方形の土地が初期ジャンボ迷路の跡地。サイクリングターミナルの東側で、サイクル列車のレールに囲まれた後期ジャンボ迷路が営業中。

AKTジャンボ迷路椿台

初期ジャンボ迷路の跡地付近に「ミネソタ州立大学機構秋田校」の学生寮。後期ジャンボ迷路を囲んでいたサイクル列車のレールはすでに消えている。

1990(平成2)年に開校した「ミネソタ州立大学秋田校」は赤字の累積を理由に2003(平成15)年閉校。2004(平成16)年、その跡地に公立大学法人「国際教養大学」が開学する。

1999(平成11)年10月「ジャンボ迷路椿台」閉園。最後は無料開放された。

1987(昭和62)年の開園年に13万人を超えた入場者数は、1989(平成1)年に約3万人、閉園の前年、1998(平成10)年には約3,000人まで落ち込んでいた。

「AKTジャンボ迷路椿台」がオープンした翌月、1987(昭和62)年4月末「仁別レジャーランド」内に県内2番目の巨大迷路が開園するのだが、そのお話しはいずれまた。

1989(昭和64)年5月、由利郡(現・由利本荘市)岩城町に開園した「天鷺遊園ファミリーランド」(2008年閉園) 内に、アスレチック要素を加味した巨大迷路「巨大あまさぎ忍者迷路」がオープン。詳細は下記関連リンク先に。