202307秋田豪雨・秋田市楢山大元町の甚大な被害

2023年7月中旬、秋田県内に発生した記録的大雨による床上・床下浸水被害住宅は、秋田市内だけで約7千世帯に達する見込みという。

最も甚大な被害を受けた地域のひとつ、楢山大元町南方の窪地では、最大で地上2メートルほどまで浸水した家もあった。

楢山大元町 河川改修
▲地理院地図 色別標高図

秋田駅から1kmほど南方、西に羽越本線、東に奥羽本線・秋田新幹線と、ふたつの路線に挟まれ、南側に太平川が流れる、三角形地帯が楢山大元町。

金照寺山の麓を流れる太平川に接した低地が被害が大きかった地域で、上掲の色別標高図でその高低差を実感できる。

いびつな舌のような特徴的な形状をした窪地の成り立ちについては、話が長くなるので次回に譲る。

同地の被害状況を伝えた短い動画を見てみよう。

「羽越楢山踏切」近くの高台、窪地の入口から「旧・ならやま酒店」方面を撮影している。2023年7月16日の午前10時頃の状況とのことなので、これでも水位が多少下がった状態なのだろう。

楢山大元町
▲高台から「旧・ならやま酒店」を臨む 2012年6月

同地が浸水した要因について、隣接する太平川の氾濫によるものと思っていたが、その予想は間違っていた。報道によると、住民は太平川の氾濫を警戒して土嚢を積んでいた。しかし、思いがけず水は反対の高台側から襲ってきた。

富士山(ふじやま)の麓「才八橋」上流において、数年前から大規模な河川改修工事(護岸工事)を施工中で、下掲画像のように仮設の橋が架けられ、一部で川幅が狭くなっている。この工事現場からあふれ出た水は奥羽本線・秋田新幹線の下を通る「楢山大元町地下道」を通過して同地に流れ込んだ。

楢山大元町 水害

高台側からの外水氾濫に加えて、雨水が下水など排水施設の能力を超えて地上にあふれ出る内水氾濫(内水浸水)が同時進行した結果、被害が拡大したとみられている。

下掲画像は「秋田市上下水道局」による「内水浸水(内水氾濫)想定区域図」を編集したもの。全体の閲覧は下記リンク先に。

楢山大元町
▲「秋田市上下水道局」作成「秋田市内水浸水想定区域図」より

秋田市内水浸水想定区域図は、想定し得る最大規模の降雨(150mm/時間)の場合の浸水状況をシミュレーションにより想定したものです。

内水浸水とは
内水による浸水とは、雨の量が排水路や下水道などの排水施設の能力を超えるときや、河川の水位が高くなったときに雨水が排水されにくくなり、浸水することです。近年、都市化の進展により内水による浸水の危険性が高まっています。

秋田市内水浸水想定区域図|秋田市公式サイト より

楢山大元町
▲楢山大元町 2023年7月20日

楢山大元町 水害
▲楢山大元町 2023年7月20日

水に浸かって使い物にならなくなった家具・家電・衣類などの災害廃棄物は、上掲画像撮影時点からさらに増え続けたが、同地は道幅が狭いため大型トラックが入れず、収集・処理作業もなかなか進まなかった。今回の災害で出た災害廃棄物の総数は、市内だけで約2万5千トン、処理費用は約20億円と想定されている。

以下の画像は災害以前に撮影したもの。

楢山大元町
▲2012年6月

窪地入口の脇に遊具を置いた小公園があり、その片隅に雨水排水ポンプの制御盤(右手の白い箱)がある。

楢山大元町
▲2012年6月

上掲画像は太平川側の雨水排水ポンプ施設。

楢山大元町
▲2012年6月

楢山大元町
▲2009年6月

楢山大元町
▲2009年6月

増水時、排水ポンプで強制排水された雨水は太平川の土手につながるパイプで放流される。

通常の大雨であれば窪地が冠水することはめったにないが、今回のように、わずか半日で平年の7月1ヶ月分の雨量を上回る、想定を大きく超える大雨に対しては焼け石に水であった。

次回は大元町の舌状窪地がどのようにして誕生したのか、その成り立ちのお話しを。