ウエハースパンと菱餅

カステラとクリームをウエハースでサンドした菓子パンは今でも売っている。しかし、初期のウエハースパンは、カステラなどという高級なものではなく、少し甘味のある、パンに限りなく近いものだった。それでも、その美味しさとカラフルな見た目で、子供たちには人気の製品であった。緑色と桃色のウエハースを使い、形は正方形や三角形のものもあったはず。

新聞広告 昭和三十五年(1960)
駅前の久保田町に工場があった時代の、たけや製パンの広告。食パンが四十円。
一個十円のウエハースパンは「味覚の王様」だったのだ。
毎年、ひな祭りが近づくと、ウエハースパンのことを思いだす。
ひな祭りにお供えする菱餅の配色が、ウエハースパンとそっくりなためだ。

菱餅の配色については諸説があるが代表的なものは以下の説。
「緑」=草萌える母なる大地「陰」
「白」=穢れを知らぬ雪のような乙女の処女性
「桃色」=桃の花であり、大地を照らす父なる太陽「陽」
だから、菱餅をお供えするときは、緑色(陰・地)を下に、桃色(陽・天)を上にしなければならない。緑色(陰・地)を上にしたら本末転倒になる。
ウエハースパンの配色は菱餅を参考にしたのではないだろうか。だとしたらそれは、東西文化が融合した縁起の良い菓子パンということになる。