ツンデレな焼菓子・栗煎餅

川端たぬき



一般の煎餅よりも、ちょっと高級で、めったに買ってもらえなかった栗煎餅。

昭和二年に栗煎餅を売り出した、山梨県の松月堂が意匠登録権をもっていたが、権利が更新されないまま、戦後になって各地に類似品が出回ったものという。真似られて全国で販売されるほど、魅力のあるお菓子だったわけだ。

写真のものは通町「せきや」にて購入した山口製菓(岐阜県)の製品。牛島駅前にあった嘉藤商店が始めた、お菓子専門チェーン店「この店かしや」でも見かけたが、惜しくも昨年末に倒産してしまった。駄菓子をはじめとする、なつかし系のお菓子が豊富に並び、しかも安く買える店だったのに残念。

原材料に「生あん・砂糖、鶏卵、みじん粉、栗ペースト」とあり、湿気ないようセロファンに二枚ずつ包まれたのが袋にパッケージされている。

生あん(白餡)の原料は「大手亡」(おおてぼ)という名の「白いんげん豆」。糯米(もちごめ)を蒸してから干した「道明寺粉」を、さらに砕いたものが「みじん粉」。煎餅なのに小麦粉を使わないのが特徴である。

パッケージの「おいしい召し上がり方」に、「お召し上がりになる前に、ちょっとお煎茶、牛乳、コーヒー等にひたしていただきますと、一段と栗せんべいのまろやかさがお口いっぱいに広がり、又格別のおいしさを味わっていただけます。」とある。

堅い煎餅のため歯の弱いお年寄りなどは、上記のようにお茶にひたして湿らせて柔らかくなってから食べたりする。しかし、コーヒーなどの香りの強いものにひたすと、せっかくの煎餅の風味が失われてしまう。セロファンをはがしてしばらく放置し、湿気させてから食べるのも良い。

堅さのあるままかじりつき、口に含み唾液で湿らすと、おそらくは「みじん粉」が効いているのだろう、それまでの堅さが嘘のようにサラサラと上品に解けてゆく。小麦粉を使った煎餅ではこうはいかない。

頑固で気が強いが、口に含むとやがて柔和に崩れ落ちてゆき、ほどよい甘さと香りが広がる、そんなツンデレ性格の栗煎餅、やみつきになる、なつかしき焼菓子である。

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関連リンク

栗煎餅・山家焼の製造販売:::松月堂:::

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