大町三丁目「三浦旅館」付近・戦前風景

昭和十年代と推定される、秋田市大町通りの写真。大町三丁目の味噌醤油醸造元「田中屋」(現・協働大町ビル)前から、大町二丁目方向を撮影している。道路中央だけが色濃く濡れているのは散水車が通ったあとか。未舗装の道路が大半だった時代、土埃を防ぐために散水車が活躍した。
右手に三階建ての「三浦旅館」。現在の「升屋駐車場」の場所にあった旅館で創業は明治三十年頃。

大正二年・書籍広告

よく見ると、玄関のわきに「三浦歯科」の看板が掲げられている。これは旅館を継いだ当主が歯科医を兼業し、館内で歯科医を兼業していたためで、在郷からの患者が旅館に泊まることもあり好評だったという。
秋田犬に引かれて散歩中の男性をはさんで、割烹着姿と、着物の婦人が二人がかりで、大切そうに乳母車を押している。乗っているのは近所の大店(おおだな)の坊ちゃんか嬢ちゃんで、割烹着姿で押している婦人は店の使用人かもしれない。
二丁目小路(現・山王大通り)に面する「三浦旅館」北側の長細い建物に、昭和九年、木内雑貨店大町支店がオープンしている。
旅館の向い側に看板をわずかにみせる店は、金銀細工「佐福商店」。

大町二丁目・勧銀・石川書店・本金
大町通りと二丁目小路の交差点に、アーチ状のエントランスをみせる「勧業銀行秋田支店」。その北隣の「石川書店」(現・スカイホテル)の店頭に「婦人倶楽部」「日の出」「富士」など、月刊雑誌の幟旗(のぼりばた)がひるがえる。さらに進んだ一丁目小路交差点角に、昭和三年に新店舗が落成した「本金」の鉄筋三階建店舗。
昭和三十年代に住所表示が変更されるまで、大町一丁目から三丁目までの、この通りだけが「大町」であった。

現在の同地点
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「三浦旅館」跡
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