雪に魅せられた殿様の『雪華図説』

川端たぬき

下総国古河藩の第四代藩主・土井利位(としつら)は、天保三年(1832)、日本ではじめて雪の結晶を科学的に観察した図鑑『雪華図説』を出版。降る雪を黒い漆器に受け、オランダ渡来の顕微鏡で覗きスケッチに残すことをくり返した、永年にわたる研究の精華であった。


『雪華図説』より

顕微鏡のレンズ越しに花開く「雪の華」の美しさに魅了された利位は、自身の調度品や着物に雪華模様をちりばめるほどの雪三昧。『雪華図説』の出版後、その意匠は江戸の庶民のあいだでおおいにもてはやされて、利位の官職「大炊頭」(おおいのかみ)にちなんで「大炊(おおい)模樣」と呼ばれ流行、利位は「雪の殿様」の愛称で親しまれる。


雪華模様訪問着


七宝造りの鍔(つば)

前回作成した紋切型「はつゆき」のデザインも利位の手によるものだが、自然科学的な観察力に、独自のイマジネーションが加味された、芸術的な意匠の数々に圧倒されてしまう。


はつゆき




Onitsuka Tiger INJECTOR DX SEKKA 雪華スノーホワイト

オニツカタイガーから2006年に発売されたインジェクター デラックス セッカ。和洋折衷のデザインがビミョー。

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Comments 2

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じゃんご
興味深いお話ですね

雪の結晶に美しさを見出した藩主とは? 興味がわいてきます。

自然が織りなす様々な形に嬉々としていた様子が目に浮かぶようです。

雪の結晶は暖かい部屋ではまず見られません。顕微鏡を外に持ち出し、外気と同じ温度になるまで待たなければいけません。
かなり寒い中でのスケッチですから本当に好きでないとできないことです。

殿様のお遊びと言ってしまえばそれまでですが、秋田蘭画の佐竹義敦(曙山)にしてもしかり、結構殿様も後世にに残るような偉業を成し遂げていますね。藩主としての作法の一つなのでしょうか。

時代も立場も違いますが、小場恒吉の紋様学に見られる意匠にも、何か共通するものを感じました。

大変興味深いお話に感謝!

ひみつ基地管理人

「雪の殿様」面白いですよね。

昔の上流階級や富豪の人たちは、文化的素養を大切にし、詩歌に親しみ芸術をたしなむ文人的傾向がありますね。

実は私、小場恒吉とは親類筋にあたり、遺品も数点残っています。

  • 2008/09/24 (Wed) 12:41
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