草に埋もれて眠る猫に高田渡を想う秋

先日の朝早く、秋の野草が花を結びアキアカネの舞う千秋公園を散歩途中、人のあまり入らない場所でなにかの気配を感じて、そちらに眼をやると、野良猫が草に埋もれるようにして眠っているところだった。

人の気配で目を覚まし、「なに見てんだよ!」と言いたげな不機嫌な顔でこちらを向いた、寝ぼけまなこがだんだんと大きく開く。

その猫の姿を見て、この曲が頭のなかに浮かぶ。
歩き疲れては沖縄生まれの放浪の詩人・山之口貘(1903-1963)の詩に、56歳で急逝した高田渡(1949-2005)が曲をつけて唄った「生活の柄」である。
夜空と陸との隙間にもぐり込んで
草に埋もれては寝たのです
ところ構わず寝たのです
歩き 疲れては
草に埋もれて寝たのです
歩き疲れ 寝たのですが
眠れないのです
山之口貘「生活の柄」より
生活の柄/高田渡+はちみつぱい
以下の動画も同じ曲だが、ライブ途中で酔っぱらって眠りこけ、客の声に起こされて朦朧とした意識のなかで途中まで唄って去っていく彼が居る。
YouTube - 高田渡 / 生活の柄
2004年3月、沖縄におけるライブの一コマ。五代目・古今亭志ん生が高座の途中で眠りこけたエピソードを連想させる飄然とした姿。
朝露の残る秋草に埋もれて眠る野良猫に、猫好きだった高田渡と、秋の浮浪者を唄った「生活の柄」を思い浮かべた、少し冷たくさわやかな秋風の吹く朝であった。

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