慈愛と異様・無名の現代アート

09.01
秋田市山王、秋田消防署脇の遊歩道にある、ハイハイする赤ん坊をかたどったブロンズ像の冬支度。その風体がすさまじくビンボー臭い。
胴体をタオルでぐるぐる巻きにした上に、コンビニ袋で包み紐で縛り、頭は手ぬぐいで頬被りし、これもコンビニ袋をかぶせるという念の入りよう。頭のボリュームからして、ひょっとして毛糸の帽子の上に頬被りしているのかも。
命のない彫像に感情移入し、防寒対策をほどこすという慈愛の行為は、お年寄りが地蔵さんに、“寒かろう”と、手縫いの着物を着せ、手編みの帽子をかぶせる心情と共通するものがあるが、この物件は“包帯で巻かれた嬰児”、もしくは“いざりの乞食”を連想させるような、ただならぬ異様さをただよわせている。
強引に付会すれば、これもひとつの“無名のアーチストによる作為なき現代アート”だ。そのタイトルは「包み隠された堕天使」とでもしようか。