秋田市に妖しき火球出現す

川端たぬき

今を去ること九十五年前、大正三年(1914)九月の初旬、秋田市中心部に於いて人魂(火球)が飛ぶ騒ぎあり。一時間弱にわたり多くの市民が目撃した。


人魂しきりに飛ぶ
一昨夜九時過ぎより十時間際に至り長町寺町田中町川端(現・川反)間に於ゐて彗星大の光芒燦々たる妖しき火魂が東西に飛び出でしより近隣の者は人魂々々と絶叫して一時は中々の騷ぎなりしが飛び去りしあとは出火(かじ)の雲燒けの如く薄明かりを空にたゞよわせしありしが戰爭があるからだ否青島がもう陷落した驗(しるし)だなどゝ川端の納涼臺(すずみだい)にて噂高いまゝ
大正三年九月六日『秋田魁新報』より

◎火玉に就ゐて
古老の談を聞くに火玉の話しをすれば幻覺か錯覺ならんと云わるゝやうになりしも前夜の火玉を見て何人(なんびと)も事實の存在を確かめたるなるべし之れに對し科學上の説明は出來ぬも我等幼時は酷暑の年に屡々(しばしば)之れを見たるものなり而して火玉の飛ぶ年は必ず豐年なりし云々(うんぬん)
大正三年九月七日『秋田魁新報』より
ちなみにこの年の作柄は並作であった。

記事の内容からしてこの現象、大槻義彦教授の提唱した「大気プラズマ説」で説明できそうだが、それにしても約一時間にわたる目撃は珍しい。もしかしたら宇宙人が遠隔操縦する人類調査用小型 UFO だったのかもしれない。なんてね(^_^)

宇宙人といえば、次期首相のニックネームだが、そのファーストレディーである鳩山幸さんの発言が世界で失笑をかっているようで、なんともはや。

精神世界かぶれでカルト教団・サイエントロジー協会の信者との噂があるこの人、その著書で「UFOに乗って金星に行った」ことを記し、テレビのインタビューで「トム・クルーズ(サイエントロジスト)と前世で知り合いだった」とか、とにかくぶっとんだ発言が多い。

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そんな与太話はとにかくとして、戦前の物理学者にして随筆家で俳人の寺田寅彦は、人魂現象を物理学的に分析したうえで、文末を次のように結んでいるのは、さすがエスプリが効いている。
‥‥前略‥‥
それはとにかく、われわれの子供の時分には、火の玉、人魂(ひとだま)などをひどく尊敬したものであるが、今の子供らはいっこうに見くびってしまってこわがらない。そういうものをこわがらない子供らを少しかわいそうなような気もするのである。こわいものをたくさんにもつ人は幸福だと思うからである。こわいもののない世の中をさびしく思うからである。
寺田寅彦『人魂の一つの場合』(昭和八年十一月、帝国大学新聞)


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