教会の鐘塔と絵本「小さな家」の思い出

秋田聖救主教会聖堂・秋田市有形文化財
かつては武家屋敷であった保戸野中町の閑静な住宅街に、ひときわ異彩を放つゴシック様式建築の秋田聖救主教会聖堂。
英国教会(チャーチ・オブ・イングランド)を母体とする、日本聖公会に属する教会。はじめは保戸野愛宕町にあった教会に、明治41年、当時日本聖公会の伝道師であった土田八九十(はくじゅう)、のちの山村暮鳥(詩人・児童文学者)が赴任、数か月間滞在した。
昭和五年竣工の現在の聖堂は、聖路加国際病院旧棟の設計で有名な米国人建築家・バーガミニーによる基本設計のもとに、聖公会信徒の上林敬吉が設計を担当。ほぼ同時期に上林は宇都宮、盛岡、郡山などに秋田聖救主教会と類似した聖堂を建築している。
盛岡聖公会
施工・昭和4年 設計・上林敬吉
近代建築散策:郡山聖ペテロ聖パウロ教会
施工・昭和6年 設計・上林敬吉
近代建築散策:日本聖公会宇都宮聖ヨハネ教会
施工・昭和8年 設計・上林敬吉 国登録有形文化財
教会の裏にある秋田聖使幼稚園は、明治三十八年(1905)四月、米国聖公会の女性伝道師が保戸野愛宕町に開設した「幼児遊戯園」を起源とする、県内ではじめて開かれた歴史ある幼稚園。

ベルタワー
ゴシック様式の特徴である、先の尖ったアーチ窓がうがたれた、いかにも英国風な白亜のベルタワー(鐘塔)。その窓が人間の眼と口のようなタワーを見上げていたら、子どものころ生家にあった、建物を擬人化した絵本のことを思い出した。
たしかディズニー絵本シリーズの一冊だったはず。わずかな記憶をたぐりよせ、ネットで検索すると、それはディズニーのアニメセルをもとにつくられた「講談社のディズニー名作絵話」の『小さな家』という絵本であった。

もう一冊、家にあった同シリーズの『ダンボ』よりも『小さな家』のほうが気に入っていて、表紙がボロボロになるまで、読みこんだなつかしき絵本。
『小さな家』の原作は今年(2009)生誕100周年にあたる、米国の絵本作家バージニア・リー・バートンの名作『ちいさいおうち』。
「むかしむかし、静かないなかにちいさいおうちがたっていました。それは、ちいさいけれどとてもがんじょうにつくられた、強いおうちでした」バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』を、ウォルト・ディズニーがアニメ化したのが1952年(昭和27年)。 YouTube を探したらその動画が数件アップされていて、絵本『小さな家』の記憶が鮮明によみがえった。
こうして始まるバージニア・リー・バートンの『The Little House』(邦題『ちいさいおうち』)は、1943年、カルデコット賞に輝いた不朽の名作だ。
ピンクのばら色をしたちいさいおうちは丘の上に建っている。りんごの花がつぼみをつけることで春の訪れを知り、初雪が舞うことで冬の到来を感じていた。だが、町の明かりが遠くに見えはじめたのをきっかけに、ちいさいおうちの周辺もどんどんと変わっていく。まず道ができ、そこに自動車やトラックが走りだし、整備されて道路となった。やがて道路はあちこちに延び、背の高い家やアパート、お店、車庫なども次々と完成、ちいさいおうちを取り囲んでいく。
とうとう住んでいた人たちも引っ越してしまい、ちいさいおうちは町の真ん中でひとりぼっち。人工的な町の照明は明るすぎて、もはや太陽も月もわからない。ちいさいおうちは思う。「月あかりの中、かがやく白いヒナゲシのお花畑やりんごの木々がもう1度見たい」と。
ぽつんと取り残され、町の中で窮屈そうにしている古ぼけたちいさいおうち。その姿に子どもたちは胸を痛めることだろう。だが、女の人が現れて、ちいさいおうちを田舎に移してやり、そこで幸せに暮らすという結末にほっとするに違いない。低年齢の読者は、あらすじや挿絵を追うのに夢中かもしれない。だが、本書は都市化の弊害をさりげなく子どもに伝えた、忘れられない作品である。『ちいさいおうち』Amazon.co.jp 商品説明 より
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