男心と「透視メガネ」

掲載年不明
昭和五十年代ころまでの雑誌にはよく見られたあやしげな通販広告。「週間実話」などのオトナの雑誌をはじめ、少年雑誌にも似たような広告が載っていた。これは価格から推測すると最後期のものか。
「透視する事が出来る」と断言せずに「透視する事が出来るようです」と逃げ道を作ってあるが、「見えたぞ!! 見えた!! 」と煽り、「類似粗悪品に注意」「日米英独特許申請画期的新発明」と「本物」であることをほのめかす手口は、テキヤの口上のごとく男のスケベ心を刺激して止まない。
透視メガネの原型は、「レントゲンガラス」「X線透視めがね」「X線透視鏡」などと様々に呼ばれ、かつては祭りの露店や、学校の校門近くにも現れたテキヤのネタ(商品)だった。「骨が透けて見えるよ」などと言われて、万華鏡のような筒箱の前後に曇りガラスが取り付けられたスコープで、手のひらを光りにかざして覗くと、指の骨がレントゲンフイルムのように黒くはっきり映る。
その仕掛けは、ガラス部分に羽毛が仕込まれていて、それを覗くと対象物の輪郭が薄くぼけて中心部だけが細く黒く見えるというもの。原料の鳥の羽は、どれでもよいわけではなく、キジの羽毛が最適で、当時のテキヤが扱っていたもののほとんどがこれを使っていたという。
昭和三十年ころ日本で始めてメガネ型の「エックス線メガネ」を開発し、通信販売を始めた人物のもとには、「ウチの親分のネタをパクリやがって、バラスぞ」「火を付けてやる」と、テキヤからの脅迫状が届いたというから恐ろしい。
覗けば透視できるという製品は、明治期の雑誌広告にすでに登場している。

「エッキス(X)光線器」明治三十二年広告
文章、イラストともに基本は昭和の広告とあまり変わらず、種類も普及品と高級品がある。高級試験用甲が三円となっているが、米一俵(60kg)四円の時代としてはかなりの高価。鳥の羽を使ったと思われる、この「不思議の珍品」、学校、病院等多数の注文には特別割引とあるのだが、はたして購入した団体があったんだろうか。
通信販売の「透視メガネ」には、「透視効果が強力なため骨まで透けてしまいました」というような断り書きが添えられいたという。原価のわりには随分高価なジョークグッズだったわけだ。
骨透視鏡
http://www.urap.org/forum/ashi/science/xray/xray.htm
原理と作り方
米国製「透視メガネ」
http://www.olywa.net/blame/how/how4.htm
日本と同じく羽毛を使ったメガネ、その原型は1940年代のものという。